「プラダを着た悪魔」感想
感想を一言…女性向け。けど意外とシビアな話
2006年公開、デヴィッドフランケル監督の「プラダを着た悪魔」(原題:The devil wears prada)
邦題にひねりがなくて良いですね。
主演はアンハサウェイ、メリルストリープです。
日本だと女性に人気のあるイメージが強く、あまり自分はそこまで興味のあるジャンルではないかなと思っていましたが、
話がとてもしっかりしているのと、画面も華やかで目に優しいので(笑、食わず嫌いせずにみることをおすすめします。
以下感想を述べています。内容に触れています。
超ざっくり話すと、ファッションに興味のないライター志望の主人公アンドレアが、キャリアを積むためにファッション雑誌の会社に入り、編集長のミランダのアシスタントとして日々奮闘するお話です。
【女子ウケがよさそう】
わかりやすく女子向けな感じの要素として、華やかなファッション、仕事の出来る主人公、カリスマ女編集長、見守ってくれる彼氏の存在などいろいろ盛り込まれています。
ファッション命みたいな会社にダサい服を着て出勤していた主人公アンドレアですが、認められるために高級でおしゃれな服に身を包むようになります。着ている服がどんどん切り替わるシーンがとても印象的でした。
最初はあたふたしてたアンドレアが落ち着いて仕事をこなせるようになる姿がカッコいいと感じられる人も多いかと思います。
【働く人の心境の変化】
私が面白いと思ったのは、仕事をする人の環境の変化に伴う心境の変化です。
アンドレアが就職した「ランウェイ」は、傍目から見ればかなりブラックじみています。
ミランダはプライベートなことも含めどんどん仕事ばかり押し付けてくる上、名前もまともに覚える気がありません。
最初、アンドレアは彼氏や友達に盛大に愚痴っていますし、1年経ったらやめてやるなんて放言していました。
しかし、認められ始めると気がついたらどんどん気持ちはランウェイ一本になり、遂にはミランダが男だったらここまで言われなかったと思う!なんてかばいだてし始めます。綺麗なファッションに身を包み、仕事も出来るようになった自分を少なからず良く思い始めていました。
それと同時に、当然のようにプライベートも崩壊していきます。ディレクターのナイジェルは、「プライベートが崩壊したら一人前」というようなことを言います。
友達が離れていく様子はやや大げさに描かれている感じもします(個展開くとか十分なおしゃれ感!)が、携帯を肌身離さずもち、彼氏の誕生日や友達との飲み会をすっぽかし仕事ばかりしているのに、それを正常と思うようになってしまいました。
精神医学の有名な用語に「ストックホルム症候群」というものがあります。誘拐や監禁事件の犯人にその被害者が同情や好意を抱くことを言います。これは、犯人に自分の生死を握られている状況のなかで、生き残るための無意識の防衛反応が原因であると言われます。
アンドレアの心境の変化は、このストックホルム症候群に似ています。
【他人を蹴落とすということ】
他人を蹴落とす、というと過激ですが、
自分も認められたいけど、同僚や先輩もいる、同業者もいるとなったときに上にのぼっていくには、当然ながら少なからずその踏み台にもされる人がいます。
ミランダは「ランウェイ」の編集長の座を下ろされそうになり、ディレクターのナイジェルの独立話を潰して自分の立場を守りました。
その話を聞いて憤慨するアンドレアでしたが、そんなミランダに「あなたは私と似ている」と言われます。
パリコレについていくのは、本来第一アシスタントであるエミリーのはずでしたし、エミリーはパリコレに命をかけている様子でした。しかし、エミリーに不運が重なったとはいえ、結局パリに行ったのはアンドレア。
エミリーからすれば、ファッションに興味もなさそうなのに悠々とパリ行きの切符を手に入れるアンドレアは自分を蹴落としたと思っても無理はありません。
「みんな私たちのようになりたいでしょ?」といって、高級な衣服に身を包み高級な車から降りて記者に囲まれる、煌びやかな世界。
他人を蹴落とすことが当たり前な中で、そこまでしてそこに本当に辿り着きたかったのかを問うて、アンドレアは辞めることにしました。
偽物の笑顔を貼り付け、腹に一物抱えてそうないけ好かない相手にも応対する様子もこの世界の象徴的なシーンです。
【光る脇役】
良い映画の条件のひとつに、メインではない脇役がきちんと描かれていて良いキャラをしていることがあると思います。
良いキャラというのは、その性格がわかるようなセリフや行動があり、その行動原理が一貫しているようなキャラだと思います(逆に、極端だったり悪い意味でバカだと見てる側がうんざりしますよね)。
第一アシスタントのエミリーは、口調はきついしすごく先輩面するのですが、一本気な性格で素直に感情を出してしまいます。単なる引き立て役じゃなくて、その人にも人生があるとわかるようなキャラで、良い味出してるなと思いました。
ディレクターのナイジェルも、出番がさほど多いわけではありませんが、厳しさの中に優しさがあり、いろんなことを経験したんだなーと想像できるキャラだなと思いました。