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Memorandum

主に観た映画(新作、旧作)の備忘録。目指せ1000

「レヴェナント 蘇りし者」感想

映画(洋画)

ディカプリオがついにオスカーを取って話題を呼んだ「レヴェナント」を見てきました。

Revenantという単語にはあまり聞き覚えがないので、調べてみると、死から蘇った誰か、長い不在のあとに戻る人(weblioより)という意味だそうです。
監督は、「バードマン」で有名なアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
 
感想を一言・・・演技力と映像が圧倒的!
 
 
予告編です。
 
以下に感想を詳しく述べていきます。※内容に触れています。
 
 




 

 
 
【半端じゃない映像美】
冒頭で一言述べたように、映像がとてもきれいです。時代設定が西部開拓時代なので、人間の手の入っていない自然が舞台です。時期が冬なので雪山の美しさや寒々しさ、厳しさが感じられました。調べてみると、撮影は自然光、特に逆光を多用し、そのため1日の限られた時間でやっていたようですね。
本当にきれいな映像で、それだけでも見る価値があると思いました。
 
また、美しい映像かと言われると違いますが、超どアップのシーンが多く見られます。映画でカメラが息で曇るシーンなんて普通ないですよね。臭いや汗が伝わってきそうな臨場感あふれる映像で、みているだけで息がつまりそうです。
 
これだけのことができる予算とか、長期のスケジュールを組めることとか、これが実現できるスタッフや出演者がいるっていう環境がすごいですね。ものすごい熱量だと思います。
手間をかければ良い映画というものでもないですけど、こういう映画が今後出て来るためにも、できるだけいろんな方向から良いところを評価していきたいですね。今作の場合は十分評価されているけれども。
 
【体当たりすぎる演技】
バイソンの肝臓生で食べたり、捕まえた魚を丸かじりしたり、骨の髄液?みたいなのを食べたり、挙句馬をかっさばいてその中にくるまったりと生きるためにはなりふり構っていられないので、ありえないような壮絶なシーンが多いです。
ただ、そうした壮絶なシーンももちろん、ディカプリオの演技の凄まじさを表しているのですが、セリフほぼなしでここまで魅せることができるのが単純にすごいなと思います。
というのは、ディカプリオ演じるグラスは、割と序盤の方で熊に襲われ瀕死の重傷を負い喉もやられ、ほとんど声が出せなくなります。しかも仲間には見捨てられるものだから、セリフがほとんどなくて、息遣いとか唸りとか、表情や体のちょっとした動作とか、そういったもので感情やその時の思いが表現されます。
台詞はあってもあとはネイティヴアメリカンの言葉で、ほとんど英語しゃべってないです。
中盤からはほぼずっとその演技をみることになるので、比較的話としては地味だし淡々とはしていますが、ずっと見ていられるような凄さだと思いました。
あと、見た目こんなんだったっかなと思うほど、おじさんになってます。ジャックニコルソンみたいです。
 
【復讐の話と銘打っていたが】
事前に得ていた情報だと、主人公が裏切られて息子を失い、復讐に燃えるストーリー、というイメージでした。ですが、実際に見てみると、大自然の中サバイバルしていくところに映画の大半を割いています。過酷な環境で一人で生きていく、という設定は、今年大ヒットした「オデッセイ」にも相通ずるものがありますが、オデッセイでは「知恵とユーモアをもってスマートに生き延びる」という感じなら、レヴェナントは「なりふり構わず生にしがみつく」という感じでしょうか。
全編通して復讐心が貫かれているわけではなく、復讐劇によく描かれる相手への執着心みたいなものはそこまで見られないです。
それを印象づけるセリフが、幾度となく挿入される「息が続くまで息をし続ける 」というセリフです。
言われてみれば、「レヴェナント」には復讐者の意味はないですし。
グラスも、最後息子を殺したフィッツジェラルドを半殺しにしますが、結局自ら手を下すことはしませんでした。
 
【先住民と白人の描かれ方】
個人的に一番印象的で本作の裏テーマといってもいいのが、作中における先住民の扱いです。ネイティヴアメリカンに対して行われたことは、完全にアメリカでは負の歴史。「開拓者」とはほんとに耳障りのいい言葉です。そうした負の歴史の覆い隠しは今もあって、ハリウッド映画の中での先住民は、わけのわからない言葉で、頭が悪いイメージで、主役の白人の引き立て役として描かれることが多いです。見ていて不快感を感じるほどそれが露骨な映画もあります。
 多くのハリウッド映画の主人公グループというか味方の人たちに黒人が一人いるのは、人種差別の是正の一環と言われていますが、ネイティヴアメリカンはまず出てきません。
 
一方で、この映画では、先住民の描き方は全く異なります。
 
まず、主人公の息子が先住民とのハーフという設定なんて、ハリウッド映画じゃ見たことないです。今作では、息子はグラスが唯一心を許す存在として描かれています。
道中で出会うポーニー族(ポーニー族はグラスがいたところ)の人は、理不尽な目にあっていることがわかりますが、「復讐は神に委ねる」としていました。自然の中で生きる術を持ち、敬虔な人物として描かれています。彼は結局白人に殺され、「野蛮」と書かれて吊るされてしまいました。
冒頭に激しく攻撃を仕掛けてきた先住民(アリカラ族)は、主人公たちのグループの敵とされていましたが、彼らは彼らで悪なのではなく、侵略に対して抵抗し、また娘を取り返すために戦っているのでした。一族の長はフランス語も話せる知恵のある人物です。
 
つまり、主人公グラスと同じで、自然と共生し、生きるために最後まで戦う者、もしくは復讐する者として、同じ立場、同じ目線なのだということを表していると思いました。
 
逆に、白人はやりたい放題やる明確な「悪」で明らかに野蛮な者として描かれています。史実上でも、先住民からしてみたら彼らが悪なのは間違い無いでしょう。
 
ただ、そんな明確な悪である白人にも正義の鉄槌が下されることはなく、歴史がどうなったかを顧みると重苦しい気持ちになりますね。
 
 
【ちょっと思ったこと】
妻や子供との思い出、侵略してきた軍人との邂逅など、過去の思い出が回想で挟まれています。しかし、そもそもなぜ白人であるグラスが先住民と一緒にいたのか、彼のルーツが明かされないので、彼自身には同情しにくいです。
見ている我々(観客:白人目線)とネイティヴアメリカンを結びつける存在として描かれていたのかなと思います。
 
物語の終盤、復讐心を示すシーンとして、グラスはかまくらに「息子が殺された」と書いていましたが、話の中ではそれまでは復讐劇ではなかったので唐突かつやや説明がましい感じです。このシーンはちょっと余計だと思いました。
 
今作はストーリーそのものよりも自然の中でのサバイバル描写に力を入れている印象だったので、どうしても話の展開で気になるところは出てきてしまいました。
あと、トムハーディ演じるフィッツジェラルドですが、話の展開からこの人は最後どうなるかはある程度想像がついてしまいます。なので、全体的に少しストーリーとしては弱いと思います。
 
実話に基づく小説が原作とのことなので、小説を読んでみたいです。感想がかわったらまたここに書きたいと思います。